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結核

2007年7月10日(火)

前回の日記でMedical Shool からの指示で予防接種(Td、MMR)を受けたことについてお話ししましたが、実は先週金曜日にもう一つ注射を受けていました。結核の皮膚テスト(英語だとTB skin test)です。日本ではツベルクリン反応と呼ばれていて、結核菌感染を診断するための抗原を皮下に注射し、48時間後にそのアレルギー反応=「腫れ具合」を測定します。全く腫れない(non-reaction)か腫れても9mm以下の場合は陰性(negative)、つまり結核菌に感染していないことを意味し、もしそれ以上腫れている場合は陽性(positive)、結核菌感染の疑いアリ、と診断されます。

で、昨日私の腫れ具合を見せにBoynton まで再び行ってきたのですが…
4mm のreaction で'Negative'の検査結果をもらって帰ってきました。
胸部X線受けずに済んでラッキーなのですが、日本人としてはなんとも複雑です…。

検査結果で「感染の疑いなし」と出れば、普通は喜ぶべきことなのですが、この結核に関しては話は別、だって日本で生まれ育った日本人ならば、陽性となるはずなのです。結核が現在でも主要な感染症である日本では、子供の頃にBCG接種を義務つけられています。これは体に悪さをしないごくごく弱い結核菌(BCGワクチン)を体内に取り込むことで結核菌に対する免疫を作り、結核発症を予防するためのもです。このワクチンを接種すれば「無症状感染状態」、つまり結核菌が体内に定着しているものの発症はしない状態になるはずなのです。私の左上腕にはBCGのスタンプ注射の跡が今も2つくっきり残っているので、子供の頃BCGを受けたことは間違いないのですが…なぜかTBテストの結果は陰性。結核菌が体内に全くいない状態で、つまりは結核に対する免疫がなく、いつでも結核に感染する可能性があるのです。

一方、日本とは異なり結核の感染率が低いアメリカではBCG接種を行っていません。その代わり学校や職場さらにはボランティア参加などの色々な機会を通じてskin test が行われ、感染者がいないかチェックしています。国によるBCG接種が行われていないので、アメリカでSkin test が行われれば、結果は陰性になってしかるべき。陽性反応が出た場合はすぐに結核への感染が疑われ、発症の有無を確認するために胸部X線写真を撮るよう指示されたり、場合によっては強制的に抗結核菌剤を服用させられたりします。日本がBCG接種を行うことで結核発症を防ごうとすれば、アメリカは結核菌の感染そのものから防止するという方針を取っているのです。私ももし検査結果で陰性と出ていたら、その後のチェックアップが何かと面倒だったと思います。

なので結核のことだけ考えるならば、私のようなBCGが上手く陽転せず結核に対する免疫ができなかった日本人は、日本で暮すよりアメリカにいる方が安全なのです。なんだか今度帰国する時、ちょっとびくびくしちゃいそう(笑)。でも、私のような例は決して稀な話ではなく、BCGを受けていても大人になってから結核に感染するケースは多く、日本では1980年代後半から結核発症数が再び増加しています。結核と聞くとどうしても昔の病気のようなイメージがありますが、今でもものすご~く身近な病気なのです。これからは長引く咳には十分注意したいと思います(私の場合、喘息もありますが…涙)。
by itoaki | 2007-07-11 07:30 | Minneapolis編
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